The Last of Us Part II 感想【※ネタバレ含】

 

 

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 お久しぶりです 要介護しんへです。

 新型ウィルスのせいでオリンピックも延期され、もう7月。エアコンが作り出す人工的な澄んだ香りが好きです。
 在宅で出来る職種ではないので仕事のスケジュールがかなりめちゃくちゃ。収入も減ってどうしようかね。

 そして今年もよろしくお願いします。 これ毎回書いてんな。

 今回は2013年に発売されたPS3の名作ゲームThe Last of Us》の続編が2020年6月19日に発売されたのでその感想を書こうかなと。これも流行病の影響で延びに延びてやっと出た。プロジェクトが一時開発中止になったり、発売日延期っていうゲームが増える中の嬉しいニュース。
 今回はこの記事のみでオープニングからエピローグまで《ネタバレ含む感想》となってます。まだクリアしてない方や見たくないって方は閲覧しない方が良いです。逆にネタバレ読んでから興味持って買うのもアリです。それはお任せします。

 またCERO:Z区分のゲームの紹介となっております。暴力や性描写等、画像や単語がいきなり出てくる可能性があります。ご了承ください。(今作はゴア描写がキツめなので珍しく前置きしておきます。無理して見ないでね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The Last of Us Part II (2020)


 アクションアドベンチャー サバイバルホラー

 開発:Naughty Dog

 販売元:SIE

 CERO:Z(18歳以上のみ対象)

 ハード:PS4(pro)

 

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ストーリー

 ジョエルと共に生き抜いた過酷なアメリカ横断の旅から5年の月日が流れ、19歳になったエリーはジョエルと共に彼の弟、トミーの暮らすジャクソンを終の棲処としていた。
 自身とジョエルとの関係の変化や、ディーナの存在に頭を悩ませつつも、街で出来た新たな仲間たちと平和に過ごす日々。

 しかしあの日の遺恨が吹雪と共に訪れ、平和な日常に終わりを告げた時、壮絶な旅がいま再び始まる。

 

 


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 前作《The Last of Us》について

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 PS3PS4でリマスター版が出ています。リマスターは廉価版もあるし価格もお求めやすいのでぜひ。2をやる前にぜひ。マジで2への没入感が段違いなので。

 

 

 

 


  ※ここから前作、2のネタバレが含まれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The Last of Us》から《The Last of Us Part II》へ


 感染発生の日、最愛の娘・サラを失ってからだれも信用することなく、狡猾で冷酷な運び屋として生きてきた男・ジョエル。
 ある日相棒のテスと共にファイアフライ(いわゆるレジスタンス)から引き受けた依頼は14歳の少女・エリーを護衛して、ファイアフライの研究施設へ連れて行くというものだった。
 彼女は感染者に噛まれても感染しない《抗体》を持っていて、これを研究すればワクチンが作れるのだという。
 ジョエルはリスクが多すぎることや、サラが生きていれば同じくらいの年齢であることなどの理由から彼女を護衛することに全く乗り気ではない。
 しかし共に危機を乗り越え、出会いと別れを繰り返し、互いを助け合ううちに確固たる絆が芽生えていくふたり。
 そして長い長いアメリカ横断の果てに、ソルトレイクにあるファイアフライの病院にて、エリーの抗体から感染症のワクチンがつくられる はずだった。

 ジョエルが聞かされたのは彼女の命と引き換えにワクチンを作るというもの。

 彼女と亡き娘を重ねたジョエルは単身で病院を襲撃、ファイアフライのメンバーを多数殺害した後、リーダーを射殺。まだ目を覚まさないエリーを連れ出して、弟・トミーが仕切る街、ジャクソンへの帰路に着く。

 街へ着く直前、なにも知らないエリーに病院でのことを尋ねられ、『お前のように抗体をもったやつが沢山いた』とうそをつく。

 

DLC/Left Behind -残されたもの-》

 エリーのかけがえのない親友、ライリーとの冒険が描かれる。本編の前日譚。

 

 個人的に、本編の《Winter/冬パート》と、DLCにおけるライリーとの関係性》エリーというキャラクターを深く知るための大切な部分であると思う。

 故にpart2でエリーが同性であるディーナと恋愛関係にあることに関してはここでいちいち言及しない。

 上記のエリーのシーンに加えてビルって登場人物もいるわけで、もともとLBGTフレンドリーな作品であることは無印の中にも散りばめられていた。ので、2からいきなり路線変更したってわけじゃない。

 

 

 


オープニング ~ 過去の遺恨

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 オープニングのトミーへ対するジョエルの独白から始まって、「うっわマジの続編なんだ!!!!」と鳥肌たった。現実世界では7年の月日が経ってるけれども当たり前のようにソルトレイクのあの病院!あの印象的な廊下!赤いランプ!手術室!すぐに思い出せてワクワクした。
 前作よりも大きく発展したジャクソンの街並みも嬉しかった。人もいっぱい増えたし、こどももいた。
 平和にジョエルとエリーが過ごしてきたのが良く分かる。

 で、さあ。 他のゲーム関係の記事で「ジョエルが見ず知らずの人間に名乗るわけがない」「ジョエルはそんなこと言わない」って言われてるのをクリア後に読んで、まず思ったのは「ジョエル、かなり落ち着いたなあ(老けた)」なんですよね。
 街の外に巡回に行ってるから平和ボケしてるっていう訳ではないんだろうけど、後に分かる《エリーに対して嘘を吐いたことで信用を失った経験》があるために、エリーと同じ年頃のアビーを見て、《正直に接した方が信用を得られる》って思った可能性もある。それがエリーとずっと一緒にいて得たジョエルの強みでもあり弱みなのかなって思った。

 感染者たちに追い詰められて逃げ込んだ先でアビーたちに捕まって、ジョエルはエリーの目の前で殺されてしまうんだけど。
 まずアビーがジョエルの脚に向けてぶっぱなした時点で「あ、直前に見たPVってミスリードだったんだ」と思った。てっきりディーナが死んで、ジャクソンの街も壊滅してジョエルとエリーが一緒に旅に出るもんだと思っていたので。
 それにエリーがThrough the Vellyを歌う、最初期の頃のPVの意味が分からなくなってしまった。(のちにシナリオの大幅な変更があったことを知ったんだけど、これは最後に書きます。)

 そりゃあこの時点でアビーに対する評価は低いよ。作り手がわざとそう描いてるんだもの。マニーなんてジョエルに唾吐いてるしね。
 なんの情報もなく現れたやつらに、前作の分身であるジョエルを殺されてスゲーショックだった。ずっと一緒にいたエリーと交わす言葉も全く無くて、こんなあっさり死ぬなんて思わなくてつらかった。(娘の名前を呼ぶ案もあったらしいけどそんなことやられたら本当に立ち直れなかったと思う)

 エリーも軽くはないダメージを受けたけどなんとか生きてて、放心のままジャクソンに帰る。
 トミーと会話を交わすうちに復讐の炎が燃え上がってきて、怒りのまま明日ここを出ると言う。マリアにも頼まれて彼女をここへ引き止めようとする彼にエリーは「逆だったらとっくにジョエルは街を発ってる」と“焚きつける”。

 その結果、エリーよりも先にトミーは家族を置いて、アビーたちを追って街を出て行ってしまう。


 エリーはジョエルの家を訪ねて、形見の腕時計とリボルバーを持って行くんだけど、ダイニングテーブルに洗ってない食器がそのまま置いてあって「帰ったら洗う」つもりだったんだなって考えたら死ぬほど涙出てきてしまった。それとジャケットのにおい嗅いだり、娘の写真見たり……思い出したら辛くなってきた。クリアしたのにもうやめたい。思い出したくない。

 

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エリー編

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 シアトル初日、ダウンタウンのパートだけなぜかオープンワールド風の展開になってて新鮮だった。ディーナと一緒にいろんなところうろつけてたのしい。そんなことやってる場合じゃないのはわかってるけど……
 ディーナと共に旅をしていくうちに死体のところで嘔吐してお腹さすってるのに気付いた。悪阻か?いやまさかな。そしたらコンパニオンとして成り立たなくなるし……と思ってたら本当に妊娠してるっぽくてたまげた。

 

 まさかジョエルとの回想があるとはおもってなくて、完全に不意打ちでしたね。ずっと泣いてた。
 宇宙船に乗って、ジョエルがカセットテープを渡して、エリーが目を瞑ってる時の彼の表情、マジですごかった
 彼女が初めて体験することへの興奮や喜びを見て、愛おしそうな視線を向けながら、今までの旅路を思い出してるのか、ずっっっと瞳に涙が溜まってんだよ。ゲームでここまで複雑な表情が出来るようになったのかと感動した。

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ここの顔です

 デトロイトの役者本人の表情を細部まで似せたほぼ完璧に近いモデルにも驚いたけど、それとはまた違う“人間の喜怒哀楽の中間、もしくはそれらが混ざり合った繊細な感情”を表情ひとつで見せてくるのはマジでやばいと思った。なんだこのゲームは?ジョエルの愛と哀の表情に放心してたら最後は《ファイアフライは嘘つき》で終わって一気に現実に引き戻された感じがした。

 ジェシーとのカーチェイスはアンチャのものすごいのを見ていたのでまじで大興奮だったし楽しかった。
 劇場に戻ってから、ふたりのいちゃ……の雰囲気に堪え切れないエリー。予想出来た分マジで見ていられなかった。
 ディーナはこのままエリーと付き合っていても子供を産む(あとに残すものがある)わけで、きっとジェシーやディーナを憎むとか、羨むとか、そんな簡単なことじゃなくて、エリーはもっと深くで自分自身に向かった感情を抱えていて、……というのがとてもよく理解できてしまう。 しまった。 
 この辺も《分かりやすくしてない》のもなんだか良かった。エリーは日記を詳細に書く子じゃない。あくまで自分の気持ちを整理するためにまとまらないことを歌詞のように吐き出しているって印象を受けた。本当にただの日記を書くことはあっても、あくまで記録としてだけなのかもしれない。
 そのあとセラファイトの縄張りを抜けて病院でノラとの追いかけっこになるんだけど、あの暴力的なシーンで感じたのは、「エリーもこの復讐は正しくない」と認識しているのでは?ってこと。自信が無いんですが、「弱った無抵抗の人間をボタンを押して殺害する」のはこれが初めて?無印のマーリーンはムービーで撃たれてたはず。放って置いても死ぬ人間を滅多打ちにするの、ものすごい嫌悪感を掻き立てられた。エリーも嬉々としてやってる訳じゃないのが何となくわかる。
 ディーナと一緒に旅をして楽しい気分になって「ジョエルのことを忘れてしまって罪悪感を感じた」と日記に記していたり。「ジョエルの死はほんとうに辛いけど復讐をやめて、ディーナと一緒にいれば幸せに過ごせるよね?」って少しは思ってるんじゃないかなあ。

 それで、ジョエルとの回想になるわけで。
 まさか前作の病院をエリーが訪れているとは思わなかった。車で帰ってたから馬だと相当時間かかるよね?
 ジョエルの誓いが嘘だったことがはっきりと分かる。(うすうす気づいていたとは思う。)ここで堪えていたものが噴き出すエリー。疑念を抱きつつもずっと信じていたジョエルの言葉が偽りだと分かって、ジョエル(と自分)のせいでワクチン開発が出来なくなった事実の重さを受け止めきれずに座り込み、顔を怒りと悲しみに歪めて涙を流す。

 ここの過去と向き合ってエリーを傷付ける覚悟を決めるジョエルの顔もすごくて、声優さんの演技も最高だった。
 エリーはジョエルに決別を告げて、このシーンは終わり。

 水没した街のパートは個人的にはあんまり面白くはなかった。風景もそんなに代わり映えしないし。「流れ」っていうテーマがあるから必要っていうのは分かっていたけど。でもブローターは出ないと思ってたから結構興奮した。タックルが怖いからあんまりやりたくない。
 水族館へ潜入したエリーはWLF兵の男女が言い争っている場面に遭遇。アビーの居場所を聞き出そうとするが襲い掛かって来たのでふたりとも殺してしまう。男のセリフで女性が妊娠していること気付く。吐き出すような「ごめんなさい……」がしんどかった。
 復讐よりもお腹の大きくなるディーナを気に掛けてジャクソンへ帰ることを決意した。矢先にアビーたちが劇場を襲撃してきて、エリーが銃を捨てたところで場面が切り替わる。

 

 


アビー編

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 子供の頃の回想はまだいい。ただシアトル1日目に戻った瞬間ここでもうやめようかなって思ったよ。エリーに殺されたはずの友人たちが生きてるのは別に辛くはない(良く知らないわけだし)けど、同じことをまた繰り返すのはつまんないなと思った。んだけど、エリー編に起きたことは上手いこと省略されてたので(そのせいでシーンが飛び飛びに感じたこともあったけど)杞憂だったなと。
 アビー編は主にエリーとは反対の《復讐を遂げて》からの物語になるわけで、ふたりの鏡合わせのような関係が際立つ。

 最序盤はアビーのチュートリアル、エリー編では敵として描かれたWLFたちの生活の様子やアビーと友人たちとの関係を表したストーリーだったんだけど。
 パッと見異性であるアビーとマニーが同室の理由だけ、いまいち理解できなかった。

 

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Anderson Abigail(アビー)とAlvarez Emanuel(マニー)

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ABBYとManny 暗くてすみません

 初めはマニーかアビーが身体的な理由を抱えててこうなってるのかとか色々考えてたんだけど日本語圏でほとんど言及している人がいなかったのでルームシェアするくらい仲がいい異性の友人ってことと考えることにしました。もし知ってたら教えて下さい。
 アイザックがスカーとの戦いに終止符を打つためにスカーの島を襲う計画を話されて、でもオーウェンが行方不明になってるので探しに行くことになって…… この辺で若干めんどくせえなと思った。オーウェンが元カレだから心配なのは分かるけどさ。
 けど、ヤーラとレブのムービーはトレイラーでも使われてたくらい気合い入っててよかった。
 でその後よ。 マジでオーウェンいる? メルもいるのに迎えに来たアビーと燃え上がってるし。国内版だと規制されてたけどオーウェンとのセックスシーンもあるみたい。彼は兵士にしてはやさしい(甘い)性格で、アビーも楽天主義でやさしくて流されやすい彼に現実逃避って意味も含めて惹かれてたのかなあ?そうじゃなきゃメルもアビーも振り回されてるだけで見てられない。
 その日の夜にまたあの病院の夢を見て、ヤーラとレブを気に掛けてもう一度トレーラーハウスに戻る。水族館に連れ帰って、また必要なものを取りに病院に向かう。そこでレブの本名がリリーで、肉体的には女の子であることがそこで分かるんだけど、嫁ぐよりも戦士になりたいってだけで生きづらくなるコミュニティ辛すぎる。しかも群れで生きていかなければ生存率もグッと下がる世界で、それでも掟を破ったレブの意志の強さよ。
 高所恐怖症のアビーに対して地獄みたいな高層ビルに作られたセラファイトの橋を渡ったり、スカーって呼び方やめてよって言ったり、レブの信仰の話を聞いたり、マスクを取ってきてあげたりする内にアビーがレブに抱く感情の変化(一時の協力者から信頼し庇護すべき存在)をプレイヤーとリンクさせてきたのは流石だと思った。吊り橋効果まんまなのかもしれないけど、怖いもんは怖いし助けてくれる人には縋りたくなる。真の力をお与えください…

 それで、また病院の夢を見るんだけど、正しいことをした自信があるからか、アビーは怯えてもいないし、武器ももっていない。手術室は明るくて、生きている父親が待っていてくれる。


 3日目は多分エリー編より移動距離が長い。朝にレブが自分の母親を説得するためにセラファイトの島へ向かい、ヤーラと追いかける。夜にはWLFの襲撃が始まって、島中に火が放たれ、その中でレブと共に脱出を図る。
 皮肉にもジョエルとやってることはほとんど一緒。アビーはWLFの同胞たちを殺し、セラファイトを殺し、レブを救う。


 その中でもヤーラが撃たれた場面の台詞が好きなんだけど、

 レブ:死んだ… ヤーラが死んじゃった
 アビー:レブ 行くの
 レブ:あいつらアビーの仲間でしょ!
 アビー:あんたがあたしの仲間!  いい? 戦ってふたりで生き延びるの

 ってところ。アビーの中ではジョエルへの復讐をして終わらせた。だから少なくとも父親の夢は見ない、少しは気が楽になるはずが一部の仲間たちとの関係にも距離が開き、未だ悪夢にうなされている。

 

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 そんな中現れたレブはアビーにとって「土砂降りの暗雲から差し込んだ光」なんだなって思った。

 

 ジョエルにとってのエリーと同じで、エリーを捕まえたブローターを切り刻んだ時みたいに、レブが大男に殺されそうになった時、アビーには不屈の力が湧いてきたんだと思う。愛だよね。言っちゃうと薄っぺらくなるのでアレなんだけどさ。しかもあんな死闘繰り広げた後に手漕ぎボートで荒れた海を漕いで水族館帰るんだぜ!?肉体も精神も強靭が過ぎる。

 

 

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 で帰ったらオーウェンとメルは死んでて、……エリーが置いて行った地図を頼りにアビーとレブは劇場まで辿り着くんだけど、ジェシーはあっさり死んでしまったし、トミーも死んだと思った。
 エリーとの決着が着いて、ディーナが叫びながらアビーに襲い掛かった時、どこかで許さないと全員破滅しかないなと感じた。
 アビーや元ファイアフライの仲間はあの時ジョエルだけを殺して、トミーやエリーを殺さなかった。その結果自分たちが死ぬ羽目になったわけで、でも、アビーたちはそこで「復讐を終わり」にするつもりだった。でも、エリーやトミーはそれを許さなかった。ジョエルのこと愛してるから。許せなくて、あの時あの場所にいたアビーの友人たちを全員殺してしまった。
 「復讐しても全部元通りになるわけじゃない」っていうのを “アビーは” 分かってはいるんだけど、いざ友人の亡骸や仇の顔を見ると怒りを覚えてしまう。


 でもアビーはレブの存在を思い出して、ディーナとトミーを見逃して、エリーも“許した”。

 

 

 


農場&サンタバーバラ

 凄まじい決闘シーンから一瞬でディーナの夢でもあった農場での甘い生活が始まって、こっちが恥ずかしくなってしまった。
 ほんとにこのままエンディングで良かったでしょ!!!どうしてそんなことするの!!???!

 ジョエルが死んだ時の記憶がふとした瞬間に蘇って、取り乱す。ディーナが鎮めてくれて、慣れてる感じだし、日記を読んだら過去にも何度かあったみたいだから完全にトラウマ(PTSD)になってる。
 そんな中トミーが家を訪ねてきて、アビーの情報を持ってくる。

 エリーはあの日劇場でアビーと戦って分かり合うでもないけど、ここらで痛み分け、妥協、みたいな感じで“納得”はしたんだと思う。

 水族館で情報が得られなかったから諦めて、みんなで帰る算段付けてたわけで、復讐への気持ちはだいぶ治まってたのでは。でもトミーはそうじゃない。アビーと戦って“納得”したわけでもない。いきなり襲われて片目と片脚を失った。しかも自分ではもう成し遂げられないからエリーに頼みに来てる。
 正直、いい歳の大人がそれはどうなの?と思ったけど、エリーはトミーの復讐心を“焚きつけた”ことがあるので彼が彼女の元を訪ねてくるのは当然な気もする。それにトミーが来なくても、エリーの耳にアビーの情報が入ったらきっと家を出て行ったと思う。サンタバーバラ編でエリーが家を出たのは自分のPTSDを何とかする(家族を危険に晒す可能性がある)ためと、気持ちに整理をつけるため、だと思う。だから序盤の《純粋な復讐心》とはちょっと違うと思う。前半はジョエルのため、後半は自分のため。
 アビーが「ジョエルに復讐すれば」と思っていたようにエリーも心のどこかで「あいつを仕留めればトラウマも治まるし夜も眠れるし食欲も湧く」と信じてる。


 レブがアビーに言い返してるのかわいい。
 っていうかアビーってかなり繊細っていうか、感情のコントロールが上手いと思うんですよね。自分を拒絶しているメルを突っぱねたりするわけでもない、むしろちょっと及び腰。自分が落ち込んで泣いてても周りに八つ当たりするようなことは記憶にある限りはしてない。なるべくフラットでいられるように大丈夫じゃなくても取り繕ってる
 どっちかっていうとエリーは感情の起伏が激しい。無印の時もだけど、勝手に街から出て行ってジョエルが探しに行ったり、ジェシーの両親の話の時も家を出て行って遅くまで帰らなかったり。アビーと比べるとかなり精神的に未熟だし子供っぽさを感じた。(軍の学校や、ジャクソンっていう規模の小さい限られたコミュニティしかしらないエリーと、規模の大きい組織に属しているアビーとの比較かなとも思う。)


 ラトラーズはもうちょっと掘り下げても良かったかもしれない。ファイアフライやWLFとはかなり気色の違う組織だったっぽいし。わたしの予想ではエリーがドーム状の建物に忍び込んだらFar Cry New Dawnのコロシアムみたいなところでアビーがレブを救うために感染者と金網デスマッチしてると本気で思ってた。マジで。
 蓋を開けてみたら脱走した罰で浜辺に吊るされてて正直拍子抜けした。髪も短くなってて、めちゃくちゃ痩せてて。ゲーム内のエクストラコンテンツでゲーム内のモデルが見られるんですけど、サンタバーバラ編のアビー、痩せただけじゃなくて日に焼けて皮剥けてボロボロなんですよね。超細かい。
 最後の決闘シーンでまさかMGS4みたいに武器を捨てて殴り合うみたいなことにはならないよな、ってちょっと思ったんですけどエリーがナイフ叩き落とされた時にちょっと嬉しくなっちゃいましたね。めちゃくちゃボロボロになった因縁同士が繰り出す覇気のない泥臭いどつきあい大好き。

 アビーのことを沈めるエリーの鬼気迫る表情もゲーム史に残るシーンだろうなって思った。凄すぎ。
 あたしこんなとこまで来て、アビーを杭から下ろしたのに、何やってんだろ、ディーナとおいもちゃんのところに帰らなきゃ、こんなことしたくない、でも彼女のことは許せない、もう引き返せない、みたいな気持ちが全部現れてた。

 死んだジョエルの顔を思い出してアビーへの“復讐心”を思いだして、生きてるジョエルの顔を思い出してアビーを“許す”のは良い演出だなと思った。
 でも書き起こすとマジでアビーにとっちゃ堪ったもんじゃないな。ロッジでも劇場でもアビーはエリーを“許してる”し、復讐するつもりはもうない。

 エリーがサンタバーバラに行かなければアビーとレブはあのまま死んでて、遠回しに復讐は完了したのに、復讐を忘れられなかったトミーが遠回しにふたりを救うっていうのも良かった。話の全体像としての意味で。多分それを知ったらトミーは怒り狂うと思うけど。

 

 

エピローグ


 農場に戻って来て、ディーナがいないのは何となく予想出来た。最悪な別れ方したし。ディーナも自分の姉をだれかに殺されてて、でも復讐はしてない。(機会があったら別)ある意味彼女は大切な人の死を乗り越えた人間で、だからいつまでもアビーへの復讐心を捨てられないトミーやエリーに呆れてたところもあると思う。それに放って置いても死ぬ確率が高いあの世界で、自分を危険に晒してまで追いかけて行くのはかなり愚かっていうか……
 トミーもエリーも家庭があるのにそれを放り出してアビーを追ったところがマリアやディーナに見限られたのかなって思いました。それだけジョエルのことを愛してるってことなんだけどさ。
 でもさあ、ディーナがエリーの荷物をそのままにしてったのは、うわっ、って声出ちゃった。もし荷物を全部持って行ってくれたら次に《ディーナたちを探しに行く》って目標が出来るけど、あのエリーの好きな物がぎっしり詰まった部屋をそのままに立ち去ったことに強い《拒絶と諦め》を感じた。

 回想(バーでセスに罵られた後)でジョエルの家を訪ねて、あの会話があったと思うとしんどい。エリーが《ジョエルのことを許したいと伝えた》、次の日にアビーに殺されたってことでしょ。ディーナとの巡回のシーンでエリーは「数年振りに一緒に映画見る」って話してたし。
 あと「生きたって証を残せたのに それを奪ったんだよ」って台詞が重すぎて悲鳴上げそうになった。エリーがレズビアンなのかバイセクシャルなのか、はっきり明言されてないけど同性ずっと一緒に居るなら自分の子供は出来ないわけで、病院でワクチン開発がされていたらエリーは死ぬけど、ワクチンを遺せて、違った世界になっていた。またワクチンを巡った別の争いは起きるだろうけど、文字通り一世一代のチャンスを奪ったジョエルのことを許せない。

 ジョエル:もしも神様がもう一度チャンスをくれたとしても… 俺はきっと同じことをする
 エリー:わかってる 多分… 一生そのことは許せないと思う でも…許したいとは思ってる

 彼女が言い終わった瞬間、ジョエルは息を吐くんだけどそれが震えてて、表情も歪んでて細かい。好きです。
 ジョエルの形見でもあるギターを部屋に残して、エリーはその場を立ち去るのも好きです。

 今作における《ギター》って《安心と安全》の象徴だと思ってて。音に反応して寄ってくる感染者敵意のある生存者から逃れて生き残るのに楽器なんて全然役に立たないじゃないですか。
 最後にエリーがギターを捨てて立ち去るのは、指を失って弾けなくなったってだけじゃなくて、《楽器を弾く安全で余裕のある生活を捨てる》って意味も含まれてるんじゃないかな。
 もちろんその後のことは描かれてないのでジャクソンに戻る可能性もあるんだけどね。

 

 


本作におけるエリーとアビーの役割について


 すみません。先にアビーいかせてくださいね。
 彼女はもうひとりの主人公ではあるけど、《エリー(プレイヤー)の行いを知る》ための役割ってのが大きい気がする。
 よく見かける感想だけど、アリスがどんな犬か、オーウェン、メル、マニー、ノラがどんな背景のある人間か知ることで《相手にも良い部分がある》、《復讐は復讐を生むだけだ》とか……そんな安易で説教くさいこと言いたいんじゃないと思いますよ。だってもうあなたはエリー編で全員殺したでしょ。今更良いところを探してもなんの進展もない。
 だからアビーへの同情を狙うなら前半と後半を逆にした方がいいんじゃないかって思ってて、理由も考えてたんですけど。
 もし狙ってああいう構成にしたんだとしたら、エリー編の後にアビー編がくることで物語の《悲惨さ》が増すんですよ。エリーとプレイヤーがやった取り返しの付かないこと。やられたらやり返す暴力の輪。
 大体のひとは切り替わった時はジョエルを殺したキャラの操作なんてやりたくない、同情したくない(する気もない)とか思ったんじゃないでしょうか。

 プレイして、アビーへの憎しみをますます強めたり、はやくエリー編に戻りたいと流してやったり、またはWLFの仲間、ヤーラやレブとの出会いでアビーのことを好きになったり……このパートでプレイヤーによってアビーへの評価が全く変わるから評価も分かれてるんじゃないかな。と思いました。100%個人の感想なので鵜呑みにしないでくださいね。

 サンタバーバラでのアビーはラトラーズに捕まったところで終わりなんですが。もうちょっと長くても良かったかな(削ったんだろうな)と思う反面、この尺でOK出したってことは2もやっぱり《ジョエルとエリー》の話なんだろうなあ。
 ジョエルの件で眼鏡が曇りがちだけどアビーはリーダーシップもあって仲間思いで敵であるスカーのふたりにも同情出来るくらい《精神的に成熟》していて、復讐のことを少し突かれたくらいで取り乱す程度には後悔もしている。

 

 


 お待たせしました。エリーです。
 結論から言えば今作のエリーはシアトル3日目までは《精神的に未熟》な象徴として描かれている。
 ジョエルの死を目の当たりにして、それは当然プレイヤーにも強い衝撃を与えて。ここでエリーの心と、プレイヤーの心はリンクする。ジョエルを殺した女を追って、復讐してやる!ってほとんどのプレイヤーが思ったはず。
 それからアビー編をやると、初めはジョエルを殺した女のことなんて知りたくないって思ったと思うんですが(ノーティドッグもいきなり好きになってくれとは思ってないと思う)、アビーの怖いものとか、怯えてる姿とか見て彼女とリンクしたり、自分の機嫌や調子をコントロールしてなるべく平常時でいようとしたり、天敵でもあるセラファイトの信仰へ理解を示す姿勢とかで《成熟した女性》であることがかなり丁寧に描かれていると思います。
 なによりレブのために危険を冒して、すべてを敵に回しても守り抜くって覚悟がマジでジョエルに似てるんだよなって思った。
 話それましたが、エリー編でジョエルの死という共通項でエリーの気持ちと一緒になったプレイヤーの心が離れ始めるのはノラのシーンかな。弱ったノラを滅多打ちにしてる姿みてやりすぎ…っておもった人、それ間違ってないと思います。
 決定的だったのはシアトル3日目の劇場でアビーと対峙したシーン。

 

 エリー:ジョエルのせいじゃないの あたしを守ろうとしただけ 治療法がないのはこのあたしのせいなの 彼は逃がして

 アビー:みんなを殺した 見逃してやったのに… 全部ぶち壊した!

 

 違和感ありませんか? 


 エリー《アビーは治療法がないことを怒ってる》と思ってるけど、
 アビー《エリーが友人や仲間を全員殺したから怒ってる》し、だからここへ来たんですよ。(エリーはアビーの怒りを理解できてない)

 

 アビーのなかではジョエルへの復讐はもうあの瞬間に終わってる。言ってしまえば治療法のことなんてどうでもいいんですよ。
 エリーやトミーを殺すつもりはなかったのに、エリーたちはアビーを探すために全員殺した。

 

 で、この後の戦闘でもアビーはレブに止められてエリーとディーナ(とトミー)をまた見逃してる。つまりあれだけのことをされても敵を“許してる”んですよね。

 自分は農場が始まったころにはちょっと一歩引いたところでエリーのこと見てた。もう自分とは考えの違う《操作キャラ》として。

 

 エリーは自らがジョエルへ向けて言った《許す》って行いの本当の意味を《ジョエルの死》の中で理解していく位置づけなのかなって思いました。で、初めから最後まで未熟なままってわけでもなくちゃんと成長も描かれてる。

 アビーを確実に殺せるところまで手を伸ばして、自分が言ったことの意味にやっと気付いたのかな、と思った。

 自分はね!!いやおまえの言ってること全然違う。そうじゃないだろってのは勿論ありだし、説明できるならそこを大切にして欲しい。あんなしんどい物語を最後までやり切ったプレイヤーってだけで尊敬する。

 あと最後の決闘シーンでレブへナイフを向けたの、エリーは無意識だったのかもしれないけど、アビーの中にジョエルに似たようなものを感じてて、それで《大切なもの》のためなら彼女は絶対に戦うってのを理解してたのかな~とも思ったり。

 

 

 

最後に


 「憎しみや復讐は良くない、相手(アビー)にも理由があってそうした!」っていうありきたりな説教くさい話で済むならたぶんみんな「続編にありがちな、ありきたりな駄作」って評価にとどまって、ここまで賛否両論に分かれなかったと思うんですよね。

 じぶんも結局前作のシナリオが完璧だったからこう安牌を取るような話になったんだろうな、で納得してたと思う。まさか荒れた海に投げ出されたボートよろしくムービーのたびに感情がぐちゃぐちゃにされるなんてだれが思ったよ?

 

 流れは止められない、って言ったのセラファイトの大男でしたっけ?

 あの日死ぬはずだったエリーはジョエルに生かされて、きっとあのエピローグの瞬間でも生かしてくれて良かっただなんて感謝はしてない。《ジョエルの作った流れ(世界)》は止められない。ワクチンが作られずに生存者たちは互いが生き残るために争っていて、感染直後から全く進歩の無い世界。
 それでもすべてを投げうってエリーを守ったジョエルの愛を痛いくらい感じてる(多分理解はしてない)エリーはアビーっていう《自分の命と引き換えてでも討つべき敵》との超が付くほどの暴力的な交流をもって、やっぱり言いあらわせないけど《許す》ってことの意味を理解する。そんな話だったのかなって思いました。

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 無印のグラフィックも当時PS3の中ではかなりやべえ部類だと思ったけど今作はPS4のグラの魅力を最大限に引き出しながら、怒りや悲しみ、友情や思慕、といった場面に登場人物たちの自然な表情が付いているせいで、物語のテーマでもある《愛憎と許し》に凄まじいまでの説得力が加わっている。言語化できずともなんとなく感じることが出来るってすごい。
 作品に触れた人間がこの作品に対して賛否両論の評価をして、かなり過激な展開になっているのも製作者側が意図した《凄惨さ》が伝わってるからだと思う。

 

 前作の主人公でもあるジョエルが死んで、エリーがアビーへの復讐を誓う。

 

 書いてしまえばただそれだけの話なんだけど。風景や登場人物たちの美麗なグラフィック、迫真の表情、感情の爆発、それに呼応した自然な動き、台詞のない心の内で蠢く葛藤、それら全てが丁寧に作られているせいで、プレイヤーが思わず顔をしかめ、背けたくなり、話を進めるたびに疲弊していくような作品に仕上がったのではと思う。

 

 でもアビー役の方に脅迫が出たとかいうのは流石に人として駄目だろ。いくらリアルに作られているとしても現実と虚構の区別くらい付けろよ。

 

 

 前作にひどく心揺さぶられたのと同じくらい、今作は心が傷ついた。

 使用されてる楽曲も全部良いんだわこれが。オリジナルのサントラも相変わらず最高だし。

 でもただうわ~悲しい~つらい~鬱~~っていうだけじゃなくて、一瞬には美しさすら感じる愛の物語で。

 それは主人公が減っても、加わっても、ちゃんと《The Last of Us》のテーマに沿っていたと思います。

 こういう作品があるからゲームをやめられないし、興味があるのに買わないなんてマジで勿体無いと思うんですよ。賛否両論、色んなところに色んな意見があって、久々に感想サイト探して読み漁ってます。(買わないで文句を言うのは意見とは言いません。)

 

 このぶん殴られたくらいの凄まじい衝撃をたぶん一生忘れないと思う。

 素晴らしいゲーム体験が出来た。

 

 

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蛇足

 

 それと、ジョエルの死は元々ディーナの死の予定で、一部の人間から口出されて大幅な変更があった……なんて記事がありますが。結果PV詐欺になるならと、開き直ったのかは知りませんが、ジョエルが生きてる風に切り取ったやつを発売直前に出したPVでもやったのは……ちょっとね。

 

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 ↑これが3年前の映像。

 

 

youtu.be

 

 ↑こっちが今年の5月に出た映像。

 

 自分はこの大幅な変更をよくまとめて完結させたな?と制作陣の手腕が化け物級なのを改めて認識させられました。


 あとあの………もしパート3が出るなら5年は間あけてください。

 

 

 

【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】

【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】

  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: Video Game
 

 

 

 

 しんへはコレクターズエディション買いました。(スイッチLiteは大きさ比較のために置いた)滑り込みでアマゾン在庫復活してたので正規の値段で買えて、こんなにいっぱい入って2万円切ってるの笑ってしまった。

 

画像

 

 

 

 開封するのに体力がいった。

 

 

 

 

 

 

 

  ここまで読んでくれてありがとう。 おわり。